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伝統発酵茶
那賀町に伝わる阿波晩茶

阿波晩茶は徳島県の伝統的な後発酵茶です。熱処理をして茶葉の酸化発酵を防いでから、木製の樽に漬け込んで乳酸発酵をさせることで作ります。世界的に見てもとても珍しい製法であり、緑茶や煎茶などの「発酵させないお茶」とは根本的に作り方が違います。

 阿波晩茶は、徳島の中でも一部の集落でしか生産されず徳島県でしか入手できない希少なお茶です。今回はその製造技術が残る地域のひとつ、那賀町相生(あいおい)地区で作られる阿波晩茶についてご紹介します。

阿波晩茶の製造技術が伝わる
那賀町について

阿波晩茶の製造技術が伝わる那賀町について 阿波晩茶は徳島県の限られた集落だけで作られています。 その阿波晩茶の製造技術を受け継いできた徳島県南部にある那賀(なか)郡那賀町は、地域の90%以上が森林という山間にあり、標高1000メートルを超える境界に囲まれています。那賀町の相生(あいおい)地区で作られていますから、「相生晩茶(あいおいばんちゃ)」とも言われます。

 使用する木桶、漬け込む時間、茶葉を摺る時間などは農家によって異なるため、農家次第で風味が違うのも阿波晩茶の奥深いところです。たとえば甘味が強いもの、酸味が強いものなどの差が出ます。

 ワインなどでは、同一品種のブドウであっても気候風土や製造所によって味が異なります。そのワインにおけるテロワール(ブドウ畑を取り巻く自然環境要因)に近い要素が、阿波晩茶にもあるといえるでしょう。

世界的にも珍しい製造技術が評価され、国の重要文化財に指定

阿波晩茶は茶摘み、茹で、茶摺り、漬け込み、天日干し、選別といった工程で製造されています。かまどの大釜で茶葉を茹でてから、茶摺りによって茶葉にあえて傷を作り、発酵を促進します。

阿波晩茶の製造時期は夏です。暑い夏に漬け込むことで、茶葉が発酵しやすくなります。しっかり漬けた茶葉を木桶の中で2週間ほど乳酸発酵させます。その後は天日干しをして、選別をします。選別は手作業で行い、袋詰めをしたら完成です。

世界的に見ても、お茶を乳酸発酵により製造する手法は非常に珍しいです。そのため2021年に国の重要文化財(重要無形民俗文化財)に指定されました。お茶というジャンルでは史上初のことです。

澄んだ黄金色のお茶

阿波晩茶は一般的なお茶よりもカテキンやカフェインが少ないため、渋みや苦みが小さく、まろやかで口当たりがいいのが特徴です。
甘酸っぱく爽やかな香りであり、他の茶葉とブレンドしても美味く、少し濃い目に淹れてすだちやレモンを絞るのも一興です。

阿波晩茶の美味しい淹れ方

淹れたてでも、冷やしても美味しいです。気温やその時の気分に合わせて、阿波晩茶を楽しみましょう。また、「淹れたて」と「冷やし」の味わいの違いを感じるのもよいでしょう。

 【煮出し】
茶葉を急須に入れて、熱湯を入れてから5分ほど待ちます。黄金色になってきたら飲みましょう。 急須ではなくやかんを使って煮出しても美味しいです。冷茶にする場合は冷ましてから冷蔵庫に入れましょう。

 【水出し】
容器に水と阿波晩茶を入れて、数時間待ち、黄金色になってきたら飲みましょう。

茶葉が水分を含むと香りや色合いが悪くなります。開封後は遮光できる容器に入れて、湿度の低い場所で保存することが大切です。適切に保存しても開封直後から風味が落ちていくので、できるだけ早く飲み終えましょう。

カフェインやカテキンが少ないので赤ちゃんや妊婦さんにも安心

乳酸発酵の過程でタンニンやカフェインなどが分解されるため、妊婦さんや赤ちゃんでも安全に楽しむことができます。また、低カフェインなので、夜に飲んでも寝付けなくなることはありません。

近年の研究ではプロバイオティクス飲料としても注目されています。プロバイオティクスとは「腸内細菌などのバランスを整えてくれる生きた微生物」のことです。

【2024 年 新茶】徳島に伝わる伝統後発酵茶 那賀町産 阿波晩茶(あわばんちゃ)200g
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阿波晩茶ができるまで

1

茶葉を摘む

阿波晩茶の茶葉は、きちんと成長した7月10日~20日頃に収穫します(ちなみに通常の煎茶や番茶用の茶葉は新芽である5月頃に収穫するものです)。一番茶葉をしっかり育てて、厚みが出る頃に摘むため「番茶」ではなく、「晩茶」と表記されるようになりました。

2

茶葉を茹でる

窯で沸かしたお湯に茶葉を通して、しっかり茹でて、茶葉の酵素活性を妨げます。たくさんの薪と水を使って、湯通しを行います。ガスではなく山の木(薪)、水道水ではなく自然から湧き出る水を使うことにより、茶葉の香りを最大限引き立てることができます。

3

擦る

茹でた茶葉をやや冷ましてから、茶葉を揉みます。揉むことでアクが取れ、茶葉の芯が柔らかくなります。これにより、漬け込みによってより深く発酵させて、茶葉の成分をしっかりと引き出せるようになります。 この工程には「揉捻機(じゅうねんき)」を使います。

4

樽に漬け込む

乳酸菌が多くいる木製の樽に茶葉を漬け込み、重石を置いて発酵させます。農家によって「発酵期間」に違いがあり、これによっても風味が変化します。

5

天日干し

発酵が十分進んだら、晴天時に樽から取り出し、さばく機械にかけた茶葉をさらに手で揉みほぐしながら広げて、天日干しを行います。早朝からこの作業をしますが、日中にしっかり乾かすために、手でさばきながら3~4回広げ直します。 那賀町は徳島県で一番降水量の多い地域であり、にわか雨も多いため、気をつけて作業を進める必要があります。雨が降ったら即しまったり、日差しがもどれば即出したりしなければなりません。

6

選別・袋詰め

乾いた茶葉を選別し、袋詰めをしたら完成です。 ほぼ全ての工程が手作業で進み、繊細であるため、もはや伝統工芸品レベルのお茶といえるでしょう。

※イラスト提供:相生晩茶振興

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